奈良美智 略歴

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1959年青森県に生まれる。1987年愛知県立芸術大学大学院修士課程修了。1988年渡独、国立デュッセルドルフ芸術アカデミー入学。修了後、ケルン在住を経て、2000年帰国。1990年代後半以降からヨーロッパ、アメリカ、日本、そしてアジアの各地のさまざまな場所で発表を続ける。見つめ返すような瞳の人物像が印象的な絵画、日々生み出されるドローイング作品のほか、木、FRP、陶、ブロンズなどの素材を使用した立体作品や小屋のインスタレーションでも知られる。

30年以上にわたるキャリアにおいて、奈良は膨大な数の作品を制作してきたが、メディアは変わってもすべての作品にありのままの自身の姿を一貫して描き出している。それらの作品は奈良が自身の存在を確認するために制作され、親しい友人たちへの自己表明として発表される。その表現への姿勢はいにしえの作家たちがもがき苦しみながら己の表現を追求していた姿と重なる。奈良にとってオーディエンスは常に仲間であり、自分自身の姿を伝え、他者と心を通わせたいという想いが制作と発表の原動力になっている。

作品には奈良が擁するすべてが含まれる。心の奥底に刻み込まれた記憶、感性を刺激し、好奇心の赴くままに出会った、音楽・絵画・文学などが何層にも積み重なっている。たとえば、9歳の頃から聴き始めた音楽には強く影響を受け続けている。ほとんどは外国語であったが、幼い奈良は想像力を駆使し、言葉の壁を超え、レコードジャケットなどから音楽の風景を自身の中に再現し、まるで自らもその世界の住人であるかのように作品を理解していった。

奈良が何にも縛られずに自由に、そしてストレートに生み出す作品は、言葉や文化背景、年代などの壁を超え、たくさんの人々から愛されている。それらは、作家が人間や物事の本質と向き合い、誠実に表現を続けた果てに、鑑賞者自身の心を映し出す鏡のような存在となる。また、近年ではTwitterやInstagramで積極的にメッセージを発信し、世界中どこにいても、仲間達とリアルタイムでつながっている。そして奈良は文字どおりの旅人でもある。自身のルーツを巡る旅に赴いたり、歴史に翻弄されながらも生き抜く人々が築き上げてきた文化の輝きに強く惹かれ、それらの土地を尋ね歩いている。これまでに出会った人々との交流を大切にし、美術という枠組みにとらわれず、吟遊詩人のようにさまざまな場所を訪れ、世界中の仲間達に向けて日々制作と発表を続けている。